映画「Das Boot(Uボート)原作小説とサントラ」です。
みなさん、こんにちわ。水の心です。
今日は映画「Das Boot(Uボート)原作小説とサントラ」です。
この映画は、81年に公開された、傑作戦争映画のひとつです。
日本公開翌年にはTV放映され、高校生の私はかなり衝撃を受けました。
その後、時間はかかりましたが、古本屋で、中古レコード屋でと、この二つが集まりました。
早川書房の松谷健二氏訳の原作本は、かなり分厚く、字も極小、しかも1ページが2段で構成されており、読み応え十分です。
今回ブログで紹介するにあたり、斜め読みででも読んでみようか、と思いましたが、どうみても数か月かかりそうなので、断念しました。
原作は小説の形ですが、原作者「ロータル=ギュンター・ブーフハイム」氏が、戦時中、海軍報道部隊勤務だった頃の、Uボート搭乗体験を基に、書いたものの様です。
そして今回驚いたのが、原作者が映画作品を気に入っていなかった事です。
英語版wikiでは「原作者ブーフハイム氏の酷評」という項目がありました。以下訳してみます。
原作者のブーフハイム氏は、1981年映画公開時の評価で、ペーターゼン監督による映像化(作品の改変)について、非常に失望した事を表明した。
(Uボートブンカーなどの)港湾建築物や、セットのデザインの技術的な正確さは非常に印象的ではあるが、とりわけ映画化の際の、監督の美的な映像、脚本構成の方法、そして結末、これらは監督によって、やり過ぎで、陳腐な改変になってしまった、と語った。
また、役者のヒステリックで過剰な演技も「非常に非現実的」と呼び、酷評した。だが、まるきり下手というわけでは無く、役者の演技の才能は認めている、とも語った。
(ドイツでの製作以前に)米国での映画製作が失敗し、ペーターゼン氏が新しい監督として選ばれるとすぐに、ブーフハイム氏はいくつかの事を試み、自分が持つ物語の詳細な脚本や、映画、写真のアイディアを監督に提供した。
その結果、計6時間にも及ぶ長編作になってしまうが、プロデューサーは、海外での配給公開時間を、90分として考えていた為、ペーターゼン監督はブーフハイム氏案を採用しなかった。
だがその名残りから「ディレクターズカット版」は200分以上。
「TVシリーズ完全版」は282分もの長さになっている。
戦時中報道部隊のUボート担当だった原作者ブーフハイム氏は、
映画作品中の特にナレーション。会話。また安直でドラマティックなスリルを撮るだけの撮影。アクション効果などが、(原作の)リアリズムとサスペンスの両方を犠牲にしている、厳しく批判した。
(例えば、乗組員が水圧で押しつぶされる艦を心配するのに、艦の気密殻のボルトが「一つ」飛ぶだけでも十分だとし、一方ペーターゼン監督は、いくつものボルトが飛ぶ、多くのシーンを撮っている)
素人の様な、爆雷攻撃からの脱出、魚雷命中後の大はしゃぎ、パトロール中の有り得ない程騒々しい乗組員描写も酷評した。
更に、士官は(劇中、報道班員として同乗した部外者のヴェルナー大尉でさえ)兵士達に特別な敬意を払って命令しており、その彼の顔に、オイルまみれのタオルを投げつけるのを見過ごす事は無いだろう、としている。
(軍隊規律の描写の失敗)
原作は明らかに反戦小説だが、大戦中のドイツUボートの戦いや、ドイツ人のヒロイズム、そして国粋主義(的表現)によって
「他への再賛美や再神聖化」に改変されてしまった、と懸念を表明。
安い米国アクション映画と、戦時中の独プロパガンダニュース映画を足して2で割ったものだ、とも語った。
以上が公開当時の、原作者からのかなり手きびしい指摘と、評価です。
原作中、困難な任務を終え基地に無事帰還したが、空襲で強固なUボートブンカー(掩体壕)に穴が開き、艦は沈没。
全ては崩壊し、艦長は重傷を負い、死を暗示させ終了します。
ブーフハイム氏は、1945年の時点で27歳。ペーターゼン監督は5歳。
戦中派である原作者の、見て来た、伝えたかった「戦争」が、単なる「娯楽作品」となってしまった事に対して、相当納得いかなかったのだろう、と思いました。
また映画の裏話も書いておくと、
ピルグリム役のヤン・フェダーは、撮影中、艦上から波にさらわれ落下し、ろっ骨を骨折。
その後、彼の出番はベッドで臥せる演技に書き換えられたが、脳震盪が収まらず病院から撮影所へ、そして撮影が終わると病院へ帰る状況だったそうです。
本作のレプリカ潜水艦は、81年「レイダース失われたアーク」でも登場。
艦内での撮影時、回すカメラの作動音が、かなり大きかった為、音声は後からの録音になった。
俳優達は、日に当たらない潜水艦生活を再現する為、撮影期間中は、屋内で過ごす様にしていた。
潜水艦全体を撮影をする際、使用したUボート模型は、潜水ダイバーが中に入って操縦するタイプのものだったが、3日後には、それを中止。なぜなら内部での操縦が原因の、ひどい船酔いになっており、これは20年のダイバー生活の中で初めての事だったそうだ。
35フィート(10m超)の艦の撮影模型に乗っていた人形は、バービー人形で、しかも恋人のケンの方だった。
ルトガー・ハウワーは艦長役に申し込んだが、82年「ブレードランナー」出演の為、あきらめざるを得なかった。
映画と同型艦のU955は、ドイツ・ラーボエ海軍記念館で、博物館船となっており、海浜の砂浜上に固定される形での展示で、内部も観覧可能。
北海で艦の模型を使った撮影時、鳩が模型にとまる為、撮影に支障が出た事がある。(スケール的に巨大鳩になる為!)
かつてドイツとアメリカの共同制作だった頃の提案で、ロバート・レッド・フォードとポール・ニューマンが、艦長役に検討されたことがある。
かつて監督を、71年「ダーティハリー」でおなじみのドン・シーゲル監督にしようとした。
そんな妥協のない原作小説は、11章に分かれ、冒頭の停泊地とラストの帰還まで、ほとんどが海の潜水艦生活と、戦いです。専門的なメカ描写に、臨場感あふれる文体。
質的量的に簡単に読むには、なかなか手ごわそうな小説です。
サントラは、Amazonで2種類が発売されています。私の持っているのはの96年の日本版18曲入りのものでした。
全体的に、マーチ風と静かな暗い曲が繰り返し入っているのですが、疾走感のある「U96」「Ruckzug」などは、ディーゼルエンジンで海上を進む艦が目に浮かびます。
一時、通勤車内で聴いていましたが、渋滞で「Gibraltar」は、暗い艦内でゲッソリ、という感じですが、上記の曲なら、気分転換にはもってこいです。
またAmazonで「Das Boot:Original Filmmusik」という2500円程度の輸入盤が販売されており、購入者の評価も抜群です。
余裕のある方は、コレクションされてはいかがでしょう?
それでは、次の更新まで!